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「90年代の10代の恋ってそーいえばこんなだったなぁ」な「君が電話をかけていた場所」

本の感想

ハチミツとクローバー」っていう名作がありますよね。

これを読んで、「あーわかるわかる!!」ってものすごく共感出来る言葉に「青春スーツ」ってのがあります。8巻で登場するもので、要は青春時代の自信と不安の合間を行ったり来たり悶々と葛藤している様を表現したもので青春スーツを脱いだ時「大人になったな」と感じ、「二度と見たくないもの」になるのが青春スーツなのですが、これは今では「中二病」とか「黒歴史」って言葉で表現されるようになりましたね。

青春スーツ」って言葉は、なんか「恥ずかしいけどどこか憎めない」ニュアンスや「はっきり思い出したくないけど今の礎になってる大切さ」みたいなのを感じるのですが、「中二病」や「黒歴史」にはなんかそういう印象を感じないなー、なんて思ったりします。

いや、ぼくにも思い出したくない青春の思い出なんて掃いて捨てるほどあるんですけどね!たまに脳裏に鮮明に浮かんで悶え苦しんだりしますもんね!

そんな「青春スーツ」を全力で着込んだティーンズたちの「もっと気楽に幸せになればいいのに!」な恋愛模様を見せつけられた、そして自分もそんな不器用な恋したわな!と青春スーツを思い出さずにはいられなかったのが「君が電話をかけていた場所」と「僕が電話をかけていた場所」です。「君が〜」が上巻で「僕が〜」が下巻です。

 

ぼくはラノベの定義はよくわからないのですが、これもジャンルとしてはラノベにカテゴライズされるんですかね?

まあ、ただの10代の恋愛模様ではなくてそこにはちゃんとSFちっくな要素が入ってくるのですが。主人公の陽介くんは顔に大きなアザがあることがコンプレックスの高校1年生。人とうまくかかわれないのも、物事がうまくいかないのも、好きな子と両思いになれないのもこのアザのせいだと思ってる若者です。それがある夜、突然通りがかった公衆電話が鳴り響き、電話の向こうから「そのアザ消してあげるから昔叶わなかった恋を叶えてみなされ」とゲームを持ちかけられるんですね。そう、ゲームなんですよ。負けたら陽介くんは命を取られるってゲームなんです。

大人になって酸いも甘いもかみしめちゃったおっさんになると「馬鹿らしい設定だなー」なんて思っちゃうんですが、読んでいくうちに「そういえば、今ではどうということない自分の身体の特徴に大きく絶望してたもんだったな」なんて昔のことを思い出すわけです。そしてぼくの脳裏の物陰で見え隠しはじめる青春スーツ! やめろ!出てくるな!!

それにしても、陽介くんの脳内の一人会議は饒舌です。どうしてそんなに深く考えるのか?そしてどうしてそんなに高尚な単語を使い、文学的な言い回しをするのか?そしてその結果、なんと哲学的な回答を導き出すのか?

それも全てこの言葉で説明できることを大人は知っているのです。

青春スーツを着てるからです」

まあ、ぼくの言い回しはテキトーですが、物語はすごくシリアスな展開を続けます。陽介くん以外にも、いろんな抱えたコンプレックスで苦しんでいる若者たちが登場します。

そして、物語の舞台が90年代なんですよね。まだ携帯電話が普及してない時代です。そーいえば、こんな景色の中で恋愛やってたわ!って思い出させるような表現がいっぱい出てきます。やめてください。ぼくの青春スーツを押入れから引っ張り出さないでください。

上巻は鬱々とした展開が続きますが下巻になると続きが気になってページをめくる手が止まらなくなり、最後は「読んでよかったな」と思わされました。10代の恋、いいな。20代になると身体の関係の駆け引きがちらほらし始めるし、アラサーになると結婚が射程に入ってきますからね!ああ眩しいい!!

てなわけで「青春スーツ脱いだなー」って方にオススメしたいです。