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できた妻の死、ダメ亭主の再生「永い言い訳」

この小説は冒頭に不幸レベルが99に達します。

永い言い訳

永い言い訳

 

 正直、「読むのやめようかな…」って思っちゃいました。

だって…

あ、以下あらすじ程度のネタバレを含みますよ?

いいですか。

いいですね。

だって主人公の津村啓さん(ペンネーム)は熱愛の末結婚したものの、20年たった今ではすっかりぎこちなくなってしまった奥さんを突然の事故で亡くしちゃうんです。

奥さんは、単なるプーだった津村さんと結婚し、売れない時代を自分の稼ぎで支えてくれたっていうできた人です。最近では小説も売れて、バラエティ番組にも出るくらいになった津村さんですが、相変わらず世の中卑屈に見てるし、なんだか奥さんとも上手くいかないし、お互い諦めてる感じ。

そんな奥さんは、そっけなく送り出した友達とのバス旅行の道中で死んでしまいます。しかもそのとき津村さんは最低なことをしてるナウだったんです。

ここで不幸レベルはすでにゾーマ級なのですが、一緒に死んでしまった奥さんの友達にも旦那と子供がいるもんだから、一気に不幸レベルは99のカンストですよ。

こちらの家族は、奥さんラブなトラックドライバーの旦那に、行きたい中学校があるため受験勉強頑張ってる聡明な小5のお兄ちゃんと、「死」ってどういうものかわかるのかしら?って歳の保育園児の妹ちゃん。

この家族に突然降りかかる「奥さんお母さんの死」です。

特に聡明なお兄ちゃん新平くんがまた泣かせるんです。自分も辛いだろうに、長距離運転で帰ってこない父ちゃんのかわりに妹の面倒もみながら勉強を頑張る。そして「辛くて自分も死んでしまいたいけどそんなことしたら子供はどうなる?」「新平は中学受験したいんだお金がいるんだ」「でもドライバーじゃ家に帰れないぞ」と悩む父ちゃん。つらい…!

この物語はそんな人としてダメな小説家と、アットホーム過ぎる環境から転落した家族が次第にお近づきになり、支え合いながら互いの人生を再スタートさせていくお話でした。

そうは言っても、死んだ人が生き返る設定なんて入る余地のないこの物語、どんなに頑張ってもハッピーエンドにはならないじゃないですか。だから「レベル99の不幸が、レベル40くらいのせめてバラモス級にならないかしら」と願いながらページをめくる手が止まらなくなるんです。

でも読み進めていくうちに、優しさやら元気やら、いろんな陽の気をもらうことになります。最後のページでは何の涙かわからない熱いものを目頭に感じながら本を閉じました。

「風邪をひいたときに健康のありがたみを感じることができる」ってのをひしひしと思い出させてもらいました。思い出したといえば、ぼくは中学のときとある先生が「ぼくの奥さんは毎朝、これが最後の挨拶になるかもしれない、と思いながらぼくを送り出してくれている。君たちは後悔のないよう、日々を生きてるか?」と、ある集会のとき話してくれたことを思い出しました。

後悔しないように、なるべく死なないように生きよう、そして自分の奥さんが生きていることに感謝です。