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絵画のミステリーは人の死なない幸せなミステリー「楽園のカンヴァス」

ミステリーってハラハラドキドキして面白いのですが、誰かの生き死にがかかるとちょっと疲れるところがありますよね。

気楽に読みたい。でもミステリーの要素が欲しい。

ってなったらこんな小説はいかがでせう?ってのが楽園のカンヴァスでした。

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

 

岡山県倉敷にある大原美術館で監視員をしている早川織絵さんの視点で物語は始まります。地方の小さな美術館で監視員をしている平凡な女性ってことですが、大原美術館といえば「なんでこんな地方にこんなすげー美術館があるんだ?」っていう美術マニアの間では有名な美術館。ここで働く人ですから「只者じゃない感」を演出するにはもってこいだなー、って最初から惹きつけられました。 

この美術館で近々アンリ・ルソー展をやる計画が持ち上がり、目玉としてニューヨーク近代美術館所蔵の「夢」を借りられないだろうかという話が出ます。大原美術館の重鎮達が先方に連絡を取ってみると向こうのチーフ・キュレーターのティム・ブラウンさんが「オリエ・ハヤカワが窓口になるなら交渉してもいいよ」と返してきます。「え?あの監視員の早川織絵さんかい??」ってなもんです。

実は織絵さん、若い頃は美術界で名の通ったルソー研究家で、ある出来事をきっかけに研究職の最前線を退き、地方の美術館で監視員をするに至ったのだ…!という冒頭です。

ここから物語はニューヨーク近代美術館のティムさんと織絵さんの若い頃の出会いの話になります。

むかし二人は、伝説の美術品コレクターで大富豪のコンラート・バイラーからの依頼でとある絵の真贋の鑑定勝負をしました。その絵はアンリ・ルソー未発表作品「夢をみた」。

これが本物かどうなのか「より良い鑑定をした方にこの絵の取り扱い権利を与えましょう。」とバイラーさん言うもんだから二人の美術愛好家魂が火花を散らします。そしてヒントとしてバイラーさんから与えられたのは謎の手帳。どうやら誰かの手記らしく、そこに書かれてるのはルソーの私生活の様子でした。

ルソーといえば税関という安泰な職を投げ捨て30代で美術の教育を受けたこともないのに突然画家になり、関節や遠近感がおかしい絵を描きまくった画家ですよね。今でこそ大スターですが当時は大変だったはずです。そんなルソーの私生活の風景と、若かりし頃の織絵さんとティムさんの熱いバトルと現在の2人、3つの時間軸はそれぞれ別の物語でも面白いのに立体的に交差するもんだからいよいよ面白いです。

果たして「夢をみた」は本物なのか贋作なのか、そしてこの絵に隠された秘密とは…!?

一枚の絵から、それが描かれた時の作家の心情や見た時代の風景を連想する、もしくは紐解く。んで絵を深く味わうって楽しさの全てがこの本には詰まってるなー。と思いました。