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「黄昏旅団」ってタイトルに惚れた

本の感想

ぼくの向こう脛には傷の跡があります。子どもの頃、庭で泥遊びをしていたら突然天気が変わって雷が鳴り始め、ビビって家に逃げ入ろうとした時にすっ転んでできた傷の跡です。3歳か4歳くらいの、残っている記憶のかなり古いものです。

この本はそんなものを思い出す物語でしたよ。 

黄昏旅団

黄昏旅団

 

冒頭から不思議な名前の人たちが出てきます。アル中でヤク中の「タイゼン」、巫女風の衣装をまとった「アイラアイラ」、ホームレスの「グン」。最初は架空の世界か何かかと思うような言い回しなのですが現代日本が舞台でした。この3人がとあるコミューンに向かっているシーンから物語が始まります。

彼らが旅団なのかしら?とか思いながら読み始めるのですが、彼らの旅は単なる旅じゃないんですね。

タイゼンというやばいおっさん、彼は人の心の中に入り込み、その人の生まれてから今日までの記憶をもとに構成された心象風景世界を「道」として歩ける「歩き手」で、「道」の上ではシャキッとしてます。アイラアイラはタイゼンのサポーター、敏腕秘書って感じです。グンはタイゼンに「こいつは歩けるやつだ」と今回半ば強制的に連れてこられて、何が何やら分かってない様子。

今回歩く道は檜山優作とおっさんの心象風景。

グンたちホームレス仲間は、最近、自分たちの溜まり場で「マナブ」といういつもひとりぼっちで自転車の練習をしている子どもと仲良くなりました。マナブの家族はバラバラになって暮らしているらしく、マナブはそのことでトラウマを抱えてるようでした。「可哀想だ、助けてあげたい!」と思ったグンたちは、父親の檜山優作が怪しい宗教団体のコミューンで生活していることを突き止めます。

「これからタイゼンの特殊な能力で優作父ちゃんの心に入り込んでマナブ一家になにがあったのかを突き止めよう」ってシーンが冒頭なんですね。

まあ、こんな感じでこの物語は何人もの「道」を冒険する話が続きます。この「道」の描かれ方が、なんかずるいんですよね。特に子ども時代の心象風景の描かれ方。自分の記憶の普段眠ってる奥の小箱をノックされると言いましょうか。こどもの頃見てた世界って、不思議だったじゃないですか。世の中の仕組みがわからなかったから。「確かにあの頃こう見えてた、あるある!」ってのがたくさん出てきます。

はてさてタイゼンは一体何者なのか?グンはなぜタイゼンに見出されたのか?檜山一家に一体なにがあったのか?

不思議な旅の物語にどっぷり浸ってしまいました。

そしてこの物語も最後の余韻がたまらないんだなぁ…。「その後」をめちゃめちゃ想像させる、ズルい終わり方をします。こんにゃろめ!