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転生したら絵画史上の巨匠…の立役者で35歳で死んだ人だったって物語

 タイトルで読む気になってしまった…!

転生したらゴッホの弟だった (FREEDOM NOVEL)

転生したらゴッホの弟だった (FREEDOM NOVEL)

 

ゴッホの弟といえばテオさんですよ。ぼくの知ってる知識では、売れないくせにアルルに13人もの大人数が住める(実際にはゴーギャンしかすまなかったけど)大きな家を借りるための金を出したり、生活費から2000枚にものぼる絵の画材代もすべて支援し、ゴッホが自殺したら後を追うように病死した、今ぼくらが知っているゴッホさんは彼なくしてはなかっただろうって人が弟テオさんですよね。

「転生したらテオになった?どんな話よ?」と興味津々で読み始めました。

主人公の岩崎俊さんは、小さいながら会社を経営している30歳。瑞樹という美術好きな彼女とゴッホの特別展を美術館に見に行った時に、糸杉の絵の前で強烈な違和感と、理由のよく分からない涙を流してしまいます。その体験がなんだったのか知りたくて、もともと好奇心旺盛な俊さんはゴッホについて徹底的に調べあげます。

1年後、さらに研究を深めるため瑞樹さんと一緒にゴッホが暮らしたオランダに。その旅先で事故に遭い、目が覚めたら17歳のテオだった!って話です。

自分がテオだって自覚はあるものの、岩崎俊だった人生もはっきり覚えている夢のような、もう一人の人格だったような、そんな感じで持っている状態。

はじめに考えたのが「おれ35歳で死んじゃうじゃん!なんとかせな!!」ってことで(順応の早さに驚きます)コンドーム会社設立を考え行動を起こします。さすが会社経営者。

ってなぜにコンドーム会社かっていうと、テオは梅毒で死ぬのはわかってるが、17歳の性欲を抑えることはできないと判断したからです。

「めちゃくちゃノリが軽いな!」

と思わされましたが、ここまでのそれこそラノベのような軽快なテンポとノリは、ここから語られる美術史とか美術作品の価値の作られ方、もっといえば歴史に残る美術作品と残らない美術作品がどのように仕分けられるか、そんなことを語るための呼び水なんですね。

すったもんだして結局テオは史実通り画商をするのですが、史実と違うのは将来ヒットする絵がわかるってことです。そして、テオはそんなヒットする絵たちを「儲かるから」ではなくて「ほんとうに素晴らしいから」「後の世では名画になるのに今貧困にあえいでいる作家たちを助けたいから」と奮闘するんです。

支援するのは当時まだ無名で、美術の価値基準を作っているアカデミーに反乱をおこした印象派の画家たちです。反逆者の画家たちと、未来を知る予言者のように立ち振る舞うテオのタッグはなかなか胸踊らされる感じで読めました。

そして、全編通して「美術作品の価値はだれがどのようにして作るのか。それはほんとうに正しいことなのか?」とそこここから問うてくる感じは本当に素晴らしい作品だなと思いました。

が、物語は「ホビット第1章」みたいなところで終わりましたよ!?ゴッホすら登場しませんでした。これ、続き出るんですか??

今ぼくめっちゃモヤモヤしてるんですけど!!

ラノベのように始まり、本題は骨太な物語で、終わりは「12話で最終回です。人気だったら第2期作ります」的深夜のアニメみたいな、不思議な本でした。