そういえば行ったことがない中野ブロードウェイが舞台の物語

やられた!またしても「俺たちの旅はまだまだ続く!」「待て!第二期!!」的なノリでいいところで終わる小説でしたよ。

つ…続きを頂戴…あたいに続きを頂戴!!

そんな悶絶気分に苛まれることになった最近読んでた本がこちらです。

表紙からエキセントリックです。

この表紙で読むことを決意しました。ジャケ買いみたいなもんです。

主人公は灰田砂彦というパッとしない感じの青年です。冒頭のシーンで彼は自分が記憶喪失だということに気がつきます。しかしこの記憶喪失がちょっと特殊で、自分のパーソナリティに関わる部分だけがすっぽりと抜け落ちてるって状態なんです。なので自分の家は冷静に思い出せる。思い出した自宅へ帰った灰田氏は、冷静に「自分は記憶喪失になるくらい自分を失いたかったのではないか?」と考えて、自分が何者であったかを調べるのをやめ、家出してしまいます。そしてもう一つ、自分が驚愕の能力を手に入れていることに気づきます。それは「脈をとった相手の欲望がわかる」というものです。

その後ひょんなことから知り合った精神科医・白旗慎之介氏(ナルシストな彼の容姿は、なんとなくTHE ALFEEの高見沢さんぽい印象)と意気投合し、白旗さんとこの助手として共同生活を送ることにします。

白旗さんのクリニックは中野ブロードウェイなので、以後物語の舞台は中野ブロードウェイとなります。 

そこに集まる、ちょっと異常な欲望をいただいた患者さんやおかしな近隣の方々、そして身の回りで起きる気味の悪い殺人事件、その背後に見え隠れする「月村蟹彦」なる謎の人物。果たして灰田氏に宿った謎の力の真相と、彼の失った記憶とは??

なにせ最初に来院する患者さんの欲望が「人肉食べたい」ってなわけですから最初からぶっ飛んでます。そのテンションはこの本の最後まで続きます。すごい物語です。

そういえばぼくは中野ブロードウェイに行ったことがありません。メディアで見聞きした情報しかありませんが、なんとなくマフィアものの映画にでてきそうば香港の裏路地的なイメージがあります。

サブカル系の古いものと新しいものが入り混じり、それぞれを求めていろんな人が集まってくる。異文化が混沌と溶け合ったような状態。実際はどうなんでしょう?そんな感じでしょうか?

そんな場所だからこそ、人々は欲望を素直に肥大させた状態で行き来する。それはある意味、人間のピュアな姿なのかもしれないですね。

気味が悪いのになぜか愛着が湧いてしまう。インモラルな欲求。そんな自分の心のざらついたところについて色々と思いを馳せずにはいられない本でした。

そう考えると「自分の黒い欲望を、美しいフォルムと綺麗な色で表現する絵描き」ってとっても崇高かもなー、なんて思ったり。「不浄」を「不浄」のまま「浄化」するっていうか。すごいな!

ところでね、冒頭に書いた通り、何一つ解明されないまま終わるんですよ。この本!気になる!

それとも「世の中はわからないことの方が多いのだよ。それでも月日は流れていくのだよ。」というメッセージがこの本の真髄なのかしらん。とにかく「変な本読んだよ!」と誰かに伝えたいリビドーが収まらない系の本でした。