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「なんでそんなに10歳の男の子の気持ちがわかるの!?」と西加奈子さんに聞きたくなる「まく子」

そしてそんな気持ちを抱えながらジュブナイルな気分で悶えることになる本でした。 

まく子 (福音館の単行本)

まく子 (福音館の単行本)

 

主人公の慧は全国区ってわけでもない温泉街の集落に暮らす小学5年生です。自分の家も旅館。かーちゃんがおかみで、とーちゃんが料理長。従業員も何人かいるけど、集落での旅館のランクは中の下。旅館のランクがそのままクラスでの自分のランクにもなる。クラスの仲間は小さかった頃から知っている。なんなら一緒に風呂にも入っている。そんな社会。

最近なんだか女子たちが色気付き出してキモい。今までよく遊んでもらっていたちょっと上のお兄ちゃんたちが中学生になって息巻いてるのがキモい。周りの大人たちの言動がキモい。特に父ちゃんがキモい。なんでかっていうととうちゃんは全力でエロくてうわきもしてるから。慧は大人になるのが怖い。キモい仲間になるのが怖い。

そんなある日、突然クラスに美少女コズエが転校してきます。しかもコズエのお母さんは自分トコの旅館に住み込みで働くとかそんなスキャンダル。エロゲーだったらコズエともお母さんともイイカンジになれるそんなシチュエーション、クラスのみんながほっとくわけがないのです。いやだ。この物語は慧のそんな苦悩の日々と成長の物語です。

なんなんすかね。男の子の大人になる儀式が克明に物語の中に描かれてるんですね。むしろ描かれすぎてるんです。温泉街って設定がズルいですよね。「成長」や「変化」が一目でわかる「裸」が生活に密接しすぎな環境です。

そして極め付けに、自分の小学5年生の記憶とシンクロするからまずいんです。やめてください。ぼくの初恋を思い出させないでください。

ちょっと序盤のネタバレになる話をさせてください。

 

 

 

 

コズエは自分のことを「宇宙人だ」と言う不思議ちゃんなんですね。 慧はそのことを嘘だと踏みます。そしてこのことは本当か嘘か最後までわからないまま話は進んでいきます。

でも思ったんですが、10歳の自分も友達も体の中も外も激変していくこの時期、女の子なんてハナから宇宙人みたいなもんでしたよね。まったくよくわからない存在。コズエの宇宙人発言は、そんなことを暗に比喩させてるような、そんな気にさせてくれました。未知の存在だからこそ知りたい。仲良くなりたい。でもよくわからない。10歳の頃の隣の席の女子ってそんな存在でしたね。甘酸っぱい何かを目一杯味わわせてくれるエンターテイメント小説。

慧はコズエとの交流を通して自分の心と体の成長と向き合い、視野を広げていきます。その過程はとても清々しく読めました。イイオトコになるだろうなって思いました。

ぼくはイイオトコになれる道を歩んだかなー?と振り返ったりしながら読みました。

ランドセルを背負っていたあの頃を思い出したい夜にどうですか?