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「殺人犯はそこにいる」は物語のように読めるが、事実がそれじゃヤバイでしょって思う

 小学6年生のとき、ある社会の授業のときに担任の先生がこんな話をしてくれました。

みんなが道を歩いていると、君の目の前に血を流して倒れている人がいたとする。その人を見てびっくりしているところを他の人に見られたら、君が犯人だと思われることがある。そしてその勘違いで牢屋に入れられることがある。

「そんな不幸なことがあるのか」とすごい衝撃で、ずっと記憶に残っている授業なのですが、この本は冤罪がテーマのルポです。小説じゃないんです。

殺人犯はそこにいる (新潮文庫 し 53-2)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫 し 53-2)

 

著者の清水潔さんは、テレビ局で特番を製作する仕事の中で96年に群馬県で行方不明になった当時4歳の横山ゆかりちゃんの事件に関心を持ちます。そして調べていくうちに、過去17年の間に半径10キロ圏内で同じ手口で幼女が誘拐され殺される事件が4件起きている事実に気がつきます。

「ひょっとしてこれは連続殺人事件じゃないのか?」とそれぞれを調べていくと、横山ゆかりちゃんの前の事件は犯人が捕まっているって事実に出くわします。犯人は菅谷利和さんで「足利事件」と呼ばれてたやつです。2010年に無罪が確定して冤罪だったって報道されたものです。

しかし当時この5つの幼女誘拐殺人事件は、菅谷さんという犯人が、5つのうちの1つで捕まっているので連続殺人ではないってことになっていました。しかし、著者の清水さんは「連続殺人と考えたほうがいい、だから連続殺人にできない理由になっている菅谷さん逮捕の経緯を洗い直したほうがいい」と考え、徹底した検証を行います。

菅谷さんが有罪になった決定打は自供と当時最新鋭のDNA鑑定。しかし、自供通りの犯行が可能かどうか検証したところ、物理的に不可能と清水さんは確信します。犯行を実現させるためには、遺体を自転車の荷台に乗せて、ありえない距離をありえない時間内に移動しなければならなかったのです。

そして、調べていくうちにDNA鑑定も実は不確かだったってことがわかっていきます。ならば今現在最新鋭のDNA鑑定をすればいいじゃないか、と訴えるのですが、それが実現しない。なんでかっていうと、同じDNA鑑定で犯人とされ、死刑が執行されちゃった人がすでにいるからってことも突き止めます。

なんというか、警視庁が舞台の、キャリアとノンキャリアの戦いを読んでいるかのような物語ですが、これが事実だっていうんですから本当に怖いです。

さらに清水さんは、調査を進め「この人が犯人では?」という人を突き止めます。インタビューもしています。そして、この調査の記録は全て警察に提出しているそうです。

なのに、この本を本屋で見かけてから3年くらい経ったような気がしますが、こんなワイドショーで連日特番を組まれるような犯人が逮捕されたって報道はされたことはないような気がします。つまりこの連続殺人事件の犯人はまだ捕まってないってことで、それもまた現実に起こっていることなわけです。

すごい本です。

とりあえず、満員電車では決して自分の手が人目につかない状態になってはならないと実感させられます。

それでも現代日本社会は、史上最高に安全な国なんですよね。人間って本当に業が深いな、と思わされます。

おすすめの本です。