西加奈子さんの「 i 」を読み終わったので感想書きます

こんにちは。連日仕事の夢を見るりとです。

今日はこの後お時間ありましたら読書感想文にお付き合いください。

西加奈子さんの新作「i」です。

i(アイ)

i(アイ)

 

 「ここにいて良い理由」を必死に考える話

西加奈子さんの文体ってどの本読んでもすごくおおらかな気がします。なのでスイスイ読めちゃうんですが、調子に乗ってスイスイ読んでると、心を持って行かれる内容でした。

以下ネタバレなしであらすじを書きますね。

主人公は、ワイルド 曽田 アイという名前の女の子です。

アイちゃんは、名前の通り出生がちょっと特殊です。

国際結婚をしたアメリカ人のダニエルさんと日本人の綾子さんが、養子としてシリアから迎えた女の子です。そして、ダニエルの仕事の都合で、小学校まではニューヨークで過ごし、中学から日本にやってきたという、国際色豊かな女の子です。

アイちゃんは聡明な子でした。

幼心に、両親よりも、両親が雇っていた手伝いさんのほうが自分と容姿が似ていることについて真剣に考えてしまうのです。どうして自分はこんなに恵まれてしまっているのか、お手伝いさんの家の子どもと自分とでは、同じ人種なのに、なにが違ったのか。

考えていくうちに、アイちゃんは自分が恵まれていることを恥じるようになります。そんな自分との葛藤と戦うアイちゃんの物語なんですね。

アイちゃんの生まれは1988年という設定です。絶妙なタイミングです。多感な時期に、9.11テロからのイラク派兵、世界各地で起こる地震や台風など異常気象による災害、そして東日本大震災をメディアから見聞きします。

そう、メディアからなんですね。

「よそで起きてる」それら全てが、そこで犠牲になった人と、犠牲になったかもしれないのに裕福な自分とを比較させ、アイちゃんをさらに苦しめるんです。

はたしてアイちゃんは、自分を許し、幸せに暮らせるのでしょうか!?

特別な身の上でなくてもみんな考えちゃうテーマな気もする

読んでいて、最初に思い出したのはエヴァンゲリオン碇シンジくんでした。テレビシリーズのラストの「ぼくはここにいても良いんだ!」「おめでとう」「おめでとう」のくだりを思い出しましたが、よくよく考えたらぼくも似たようなことを考えてたなーと、香ばしい記憶の扉を開いてしまいました。

思い起こせば、それこそ「世界には不幸な子供達がたくさんいるのに、自分はこんなに不自由なく暮らす価値があるのだろうか」という謎の不安を感じていた頃が、あったんですよ、ぼく。ああ恥ずかしい。

ぼくはかなりへそ曲がりな10代を経験してまして、どうしても学校の勉強に価値を見出せなかった時期があるんですね。「こんな勉強が将来何の役に立つのだろう?」と本気で考えてしまい、手がつけられなかった時期があるのです。中2の後半から高1の終わり頃まで続いたのですが、同時に学校の成績で自分の価値もランク付けされることも承知していたので、反発しながらも「おれには価値がない」って落ち込んでいたのです。(ちなみに高2になったときに、突然「ああそういうことか」と鱗が落ち、それ以降勉強することができるようになりました。)

今思い返せば、純粋に「勉強だるい」という気持ちに大義名分という鎧を着せていただだけなのかもしれないし、学校の成績でつけられるランクなんて、その人の一面でしかないことも知ってしまいましたが、当時は真剣でした。それが「若さ」ですよね。

40歳も近くなってくると、食うものに困らず、健康で、小さくてもいいから楽しいことがそこここに散らばってれば「人生言うことなし」みたいになることを知りました。でも、ふっと立ち止まってみると、「自分がここにいても良い理由」を本気で考えてた頃もあったな、今思えば大事なことかもしれないな、とか思う、そんなお話でした。

西加奈子さんの他の本もすごいのでおすすめです。

ritostyle.hatenablog.com

 

ritostyle.hatenablog.com