賃貸で前の住人の痕跡からアレコレ妄想するのが好きな人が読むといい小説

こんにちは、りとです。暑くなってきましたね!

今日は部屋でぐったりしながら読んだ「三の隣は五号室」という本の感想を書こうと思います。 

三の隣は五号室

三の隣は五号室

 

賃貸の「壁のシミ」や「貼ったままのシール」から前の住人に思いを馳せる

賃貸で生活した経験がある人なら、だれでも思い当たる節がありますよね。自分の仕業ではない「家に残っている痕跡」を見つけた時、「前の住人ってどんな人だったのかな?」って考えたこと。「子供だったらほっこりするな」「女の人だったらドキドキするな」、…おっさんって可能性は嫌な痕跡以外あんまり考えませんね…。

この小説は、「第一藤岡荘」というアパートの「五号室」が主人公です。

もうちょっと説明すると「第一藤岡荘」ができた1966年から、リフォームすることになった2016年までの40年の間に「5号室」に住んだ13人の住人たちのエピソードを綴った物語なんです。


住む人もとてもバリエーション豊富です。「大学生になって初めての一人暮らし」とか「単身赴任の一時的な仮住まい」、ほかにも「新婚の愛の巣」、「闇の仕事の関係者」、「外国人留学生」、「老夫婦の終の住処」、「女子二人のルームシェア」などなど。住んだ期間も人それぞれです。
住む人によって、部屋の使い方も、家具の置き方もまちまちです。「自分だったらこう使うな」って想像しながら読んでいて、「あの人とこの人は同じ使い方した!」みたいなことがあったりして妙に親しみを感じたり。

歴史順ではないそれぞれのエピソードの語り方が面白い

住人のエピソードは、年表のように順を追って語られません。なにかひとつのキーワードについて、五号室の生活中に関連するエピソードがある住人がその都度ピックアップされて語られる、という形式です。

例えば、最初の章は「引っ越してきた日に、変な間取りだな、と思った」メンバーのお話です。

他にも「部屋で聞いた雨音」とか、「タクシーで第一藤岡荘に帰ってきた日」とか、「風呂の湯が漏れるがどこから漏れているかわからない」とか、「棚の奥に置かれた水道の取っ手」とか。

その都度、話ごとに関連するエピソードのある住人について、入れ替わり立ち代わり綴られながら五号室の日常が語られるのです。

「水道の蛇口を回すタイプからレバー式に変えてみたら、思ったより勢いよく水が出ちゃったので、水不足!というシールを貼りました。」という住人がいて、それを何代かあとの住人が発見して「これ前の住人の人かな?」なんてニンマリしてたら、実は結構前の人でした。みたいな、そんな小話が続きます。

神の目線になって、この部屋を何年も見守っているような気持ちになって、なんだかほっこりします。

物に神が宿るってこういうことかな?って思った

この「神の目線」て、つまり日本の「八百万の神々」って、ひょっとしたらこういうことなのかな?てふと思いました。

モノ自体には魂はないのかもしれない。でも、シミとかキズとか、モノに残った痕跡から、「知らない誰かの気配」みたいなものを感じてしまいますよね。だれがつけたものかわからないから、神聖な、もしくはなにか霊的ななにかのように感じてしまう、みたいな。

勝手な妄想ですけどね。

宗教的に、不快に感じた方がいらっしゃったらごめんなさい。

そういえば、ぼくはフローリングに子どもがキズをつけるの、あんまり嫌いじゃないんですよ。今までより一層「自分たちの家」になった気がして。傷が物語になったように思えるんです。

あんまりやられすぎると怒りますが。

「アメリ」の宝箱の持ち主を探す話も好きです

似たエピソードで、ぼくが大好きな映画「アメリ」も、主人公の女の子アメリが、ふとしたきっかけに自分の住んでる部屋で「子供の宝箱」を見つけて、持ち主を探し出して返そうとするエピソードがありますね。あれも好きだなー。というか、アメリ自体大好きだなー。

アメリ [Blu-ray]

アメリ [Blu-ray]