小説「二階の王」の感想。現代社会を舞台にしたファンタジー好きにオススメしたい感じです

こんにちは。忙しくても本は読むりとでございます。

今日は「二階の王」という本を読み終えたので感じたり考えたことを書きますよー。

この本、序盤の展開がすごくいいので、冒頭部分のネタバレ交えて書きますね

二階の王

二階の王

 

2年間自室に引きこもって出てこない兄が「二階の王」

タイトルの付け方がうまくないですか!?この本の主人公である27歳妙齢の女子、朋子さんには2年前に自室に引きこもってから家族とも顔を合わせない兄がいるんですね。外出しないのではなく、部屋から出ない。家族とも顔を合わせない。

朋子さんは家族とともになんとか兄に出てきてもらおうと奔走するのですが、なんだか最近身の回りでいろんな変な出来事が起きるのです。それはふと鼻をかすめる甘い腐敗臭だったり、綺麗にしてるはずなのにキッチンに寄ってくる小蝿だったり、意味深な言葉を発する近所の虐待を受けてそうな子どもだったり…朋子さんのパートは、兄の社会復帰を願う家族の話のはずが、次第に不思議な異世界にズルズルと引き込まれて行くような不気味さを帯びた展開なのです。

人々を謎のモンスター「悪果」に変える存在「悪因」

物語は、朋子さんパートと並走して、朋子さんに密かに思いを寄せる掛井くんパートが進みます。

掛井くんパートにはたくさんの登場人物、というか掛井さんと志を共にする仲間たちが登場します。彼らは、人間の振りをして日常生活に溶け込んでいるモンスター「悪果」を識別する力を持っているのです。

はじめは「おれって精神に異常をきたしたのでは?」と思っていた掛井くんたちでしたが、「悪果」について研究をしていたものの行方不明となった考古学者の砂原の記録をもとに、仲間を集める元警察官の仰木さんの呼びかけで集結します。

「悪果」は、人間をモンスターに変える力を持った存在「悪因」の手によって人間が変貌した姿でした。日々増えていく「悪果」たちとの来たるべき決戦の日のために掛井さんたちは準備を進めているのです。

「面白いな」と感じたところ

・日本ホラーエンターテイメントのいいところを堪能できます。

海外のホラーって「っわ!!」って驚かせるのに対し、日本のホラーは「ひゅ〜どろどろどろ…」ってじわじわ来るのが得意ですよね。貞子さんも、ゆっくり井戸から出てくるから怖いのです。このお話の朋子さんパートの日常が壊れていく感と、それを追う事で感じる気持ちの悪さ、ワクワクせずにはいられないのです。

・なんかの拍子に他人がモンスターに見える事ってありますよね。

掛井さんに限らず、何か理不尽な物言いとか、自分には理解できない事を言われる時って、相手の事がモンスター…とまで言わなくても理解できな存在に感じることってありますよね。「悪果」って、なんかそれのオマージュのように感じられたんです。

・誰だって悪果になるよね。

作中は、邪な気持ちがある人間が「悪因」に接触すると「悪果」になる、みたいな描かれ方なのですが、全く清廉潔白な人間なんて滅多いませんよね。なので、悪果になるかならないか、なんてその時の心の持ちようや体調のコンディションのちょっとした差で、誰にでも等しく可能性があるような気がしました。これってつまり、善人も悪人も紙一重よね。って事なのかなー?なんて思いました。

・ヒーローパートの「普通の人感」というか「頼りなさ感」が半端ない

悪果を識別できる掛井さんたちは、言ってみればこの物語のヒーローたちです。ですが、このお話で悪果を識別できる人たちって、つまり「人の変化に敏感である」とか「他人の言動が人一倍きになる」みたいな繊細な人たちなんですね。強そうではないんです。もっと言えば、客観視すると「怪しい考古学者が残した記録を読んで幻聴幻覚を見るようになったカルト集団」にも見える存在です。

これは「宗教」って聞くと「あやしいもの」ってつい思っちゃう無神論者日本人への皮肉にも感じられました。

現代社会を舞台にしながら異世界系の何かと戦う系の話が好きな人へ

てなわけで、多分あらすじをスルっと書くと、すごく王道なファンタジーになりそうなところを、ホラーであったりいろんな皮肉を噛ませる事で、すごく不気味で気持ち悪い、でも読み出したら止まらないお話にまとめているな、と思ったのがこの「二階の王」でした。

手に取ってみようかな?なんて方が一人でもいたら幸いです。

では!

おまけ

ペンタブ、慣れてきました。イラスト新作は、みんな大好きなこんなポーズにまとめてみようと思います!

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